ドラマチックな河川敷

河川敷でバンド練習をやっていると、ときどきドラマチックな出来事がおこります。
そのちょっとしたドラマを書き綴っていきます。
基本的に実話ですが若干の脚色をしたものもあります。
その4 【河川敷で若くなる】

 レベーターに乗った時の話です。エレベーターのドアが開いた瞬間に私はドキッとしました。そこにはどこかで見た事のある初老のおじいちゃんが「ギョッ!」と私をみて驚いているのです。

「えっ!誰?このおじいちゃんは。」

と0.1〜0.2秒ほどパニックになりましたが、その人物が誰なのかすぐに判明しました。初老のおじいちゃんは私だったのです。壁一面に張られた全身鏡に写った私自身だったのですが、自分の全身を普段見なれていないためか、または意識の中の自分の外観と実際の外観がかけ離れていたためか、すぐには自分だと認識できなかったのです。外観がこんなにも老けてしまった現実を再認識し私は少し落ち込みました。

 観は実年令以上に老いていますが、普段の私の思考感覚は実際よりも若干若くておそらく40〜50才ぐらいではないかと勝手に思っています。まあ、ですから若いと言っても少年や青年などの若者レベルではないとは思いますが。
しかし、事がバンドになると精神年令が激減します。河川敷バンド練習の行われる日の私の精神年令は確実に現実離れし20才代です。青年です。前日の金曜日の夜にバンド会場設営機材の準備をするのですが、その時の精神的な昂揚は「遠足前日のおやつを買いに行く小学生」の昂揚とほとんど同じですから、20才代よりももっと若くて小・中学生ぐらいの少年かも知れません。いずれにしても私にとって河川敷バンド練習は思考そのものが少年や青年のように幼く若くなります。そして最近気がついたのですが、若くなるのは私だけではないようです。
と、いうことでバンドメンバーも私と同様に「河川敷で若くなる」というエピソードを2つ。

 ずはギタリストのSさんの話。ある日の河川敷バンド練習の朝、いつものように会場設営をしていると、Sさんが予定集合時間より1時間近くも早くにやってきました。彼が早く会場入りした理由はエレキギターの弦を張り替えるためだったのですが、驚いたのはそのエレキギターは当日購入したばかりのものだったのです。河川敷に来る途中で楽器店に寄って買って来たらしいのです。

 知県東部に自宅がある彼は河川敷にストレートに来るだけでも大変な距離なのに、楽器店に寄ってエレキを買って、しかも1時間近くも早くやってきたのです。パワフルですねえ。やる気満々です。

「このレスポール、今日のバンド練習で使おうと今朝、買ってきた!」

と ニコニコしながら弦を交換している姿は50過ぎのくたびれたオッサンではなく、元気な10代のギター少年そのものでした。 そしてそのギター少年の辺りから西城秀樹の「ヤングマン」のBGMが流れていました。

 にヴォーカリストのKさんの話。室内スタジオでテスト参加された彼は河川敷スタジオ未体験なので正確に表現すると「野外バンド願望で若くなる」という話です。

 Kさんがテスト参加された数日後、彼から電話がありました。「刈谷ハイウエイオアシスで音楽祭があり、演奏するバンドを募集しているので応募しましょう。9月に予選があり10月に本選です。」と話すその声は少し興奮ぎみです。

 の音楽祭は野外で演奏できるようで「野外」や「観客」や「予選」とかの単語だけでなんかドキドキワクワクするイベントなのですが、残念ながら出場できないのです。実はほかにもライブ出演の話がありお断りしたばかりだったのです。

 ターのTさん経由でプロ級バンドのビーグルスさんから「3バンド合同ライブ」へのピンチヒッター出演の打診があったばかりでした。当バンドがライブ出演に名前がノミネートされただけでも非常に光栄なことなのですが、残念ながら新河川敷バンドの現在は「リードギター担当不在」「サイドギター担当が仕事で参加不可能」「人前で演奏するにはまだまだ未熟」を理由にお断りしたばかりでした。ですからKさんお勧めの刈谷ハイウエイオアシス音楽祭への応募も同様の理由でできないとお伝えしました。 ところがその数日後、彼から携帯に写真メールが届きました。

 れは刈谷ハイウエイオアシス音楽祭の告知ポスターの写真です。

「えっ!どういうこと?応募は無理と伝えたはずなのに…」

おそらくKさんの情熱がメールを送らせたのです。せっかくの野外ライブ出演できるチャンスですから彼は諦めきれなかったのですね。 私は携帯に写っている告知ポスターの写真を見て、ある光景が浮かびました。

 もちゃ売り場で『買ってくれるまで帰らない!』と母親にダダをこねる少年の微笑ましい光景です。そしてその少年の背後には西城秀樹の「激しい恋」が流れていました。 ♪やめろと言われても〜 いまでは遅すぎた〜♪


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