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その2 【プロの底力】
ドラムの個人練習を河川敷でやっていると、楽器演奏愛好家の方が声をかけてくれます。“ドンチャッドドン”の音に興味を示すのはやはりドラムス経験者が一番多くて、今までにアマチュアドラマーが4人、セミプロのベーシストが1人、プロの演歌歌手が1人、ブラスバンド経験有りのクラリネット奏者が1人です。 声をかけていただいたドラマーの方にはフィルインなどを教えてもらったりしていました。その時の感動話を2つ紹介いたします。 まずはプロ級アマチュアドラマーの話です。若い頃プロのバンドから誘われたことがあるという40代のプロ級の実力のアマチュアドラマーの話です。 観覧されていた彼と挨拶を交わした後「それではお願いいたします。」と彼に見本演奏をしていただくことになりました。彼が演奏を始めた途端に私は驚きました。 演奏が上手いことに驚くのはもちろんですが、本当に私が驚いたのは彼が出す音の音質と迫力についてです。つい先程まで私が使っていた安物ドラムからすごくいい音が出ているのです。私の初心者向けドラムが、突然、録音スタジオ用の高級ドラムになったような‥‥。まあ現実の高級ドラムの生音は聴いたことがなく、私の知らない世界の全く別物のような音だとは思いますが‥‥。とにかく「へぇ〜このドラムってこんなに迫力のあるいい音が出るんだ。」と私は感心しました。彼が操る私のドラムスは、今や水を得た魚のように元気に泳ぎ出したのです。打き方ひとつで音色や音量が変わるという理屈は理解しているつもりだったのですが、今、出ているその音はあきらかに想像を超えたすばらしい音でした。改めてプロ級の実力者のすごさを実感しました。 |
次はセミプロベーシストのときの話です。30代と思われる彼はあるプロ歌手のバックバンドの欠員が出た際に助っ人ベーシストとして参加しているそうです。
そんな実力の彼にバンド練習のときに一度だけ参加していただきました。ドラマは長渕 剛の「夏の恋人」という曲を弾いたときにおこりました。 その曲を提示したところ、彼は一度も聴いたことの無い知らない曲と言います。しかし、歌詞とコードとブレイク記号だけ記入してある簡易譜面を見せたら彼は「なんとかなる。」と力強い言葉。私はほんまかいな?と思いつつも演奏をすることになりました。 ドラムのカウントが始まって、バーンと音が一斉に鳴り出しました。なんら違和感なくベース音が聴こえてきます。流石にイントロと1コーラス目はベースランも少なくおとなしい感じだったのですが充分に気持ちの良い演奏です。ブレイクもピッタリ止まります。「すごいなあ。」と私は感心していました。とても初見の曲とは思えないほど安定し馴染んでいます。ところが本当のすごさはこの後からでした。 間奏が終わり2コーラス目からのことです。おそらく1コーラス聴いただけで曲調が判ったためでしょうか、突然、彼はチョッパーベースで弾きだしました。しかも自由自在にかっこいいベースランを入れてきます。それはまるでいつも弾き慣れている馴染みの曲のようです。その演奏には何の迷いもありません。 「な〜んだ。知っている曲だったのかあ〜。」 と私は心の中でつっこみます。 2コーラス目から彼はベースギターを背中に背負って、水を得た魚のように元気に泳ぎ出していました。彼の泳ぎ方は平泳ぎからクロールにかわりバタフライ、背泳へと変化させ、最後にはトビウオのようにジャンプしてからピタッとゴールをかっこ良く決めるのでした。 曲が終わり彼への拍手喝采のあと、私は失礼にも彼に問い質してしまいました。 「あの〜、やっぱり〜、 一度ぐらいは聴いたことがある曲だったんでしょう?」 すると彼はバスタオルで体を拭きながらキッパリと言いました。 「いいえ。聴いたことは一度も無いです!」 ……プロって、すごいですね。 |